コイルに直流の電流を流すと、目には見えない磁力線が生じて、その力で鉄などの
金属を引きつけます。その際鉄などを芯にして巻くと、磁力線がより強力な磁石
にすることができます。このとき生じる磁力線の向き(Nから出てSに入る)は
コイルに電流の方向で決まります。コイルが右まわりに巻いてあり、コイルを
流れる電流の向きが右回りになるような方から見たとき、手前から先へ向かって 磁力線が生じます。これを「右ネジの法則」という覚え方をします。ネジ
を回す向きがコイルを流れる電流の向き、ネジの進む方向が磁力線の生じる方向
と一致しているからです。
コイルに電圧計(電流計でもよい)をつなぎ、棒磁石を素早く接近させてみます。
すると電圧計の針が降れます。コイルに電圧が生じた訳ですが、そのとき流れる
電流の向きは、接近する棒磁石の極に反発する向きの磁力線が生じるような方向
です。接近させた状態の棒磁石を素早く遠ざける場合にも電流が流れますが、
その場合の電流の向きは反対になります。
さて、コイルは自分自身に電流を流すと磁力線を生じ、逆に変化する磁力線を
受けると電流が流れますが、この性質を利用して作られたのがトランスです。
トランスは口の字型に作られたある金属(鉄等の板を重ねあわせたもの)の両側
にコイルを巻いた状態でできています。左側を一次側、右側を二次側と呼ぶことに
します。今一次側のコイルに直流の電流を流したとしますあ。磁力線が生じ、
口の字型の金属のおかげで効率よくループします。磁力線は二次側のコイルを通過
しますが、直流の流れ始めるときと終わるとき以外は何も変化は起きません。磁力線
が一定だからです。そこで今度は一次側に交流の電流を流してみます。大きさも向き
も変化する交流に合わせて、金属をループする磁力線も大きさと向きが変化します。
すると二次側のコイルにやはり大きさと向きが変わる電圧が生じます。一次側に
交流の電流を流すと、二次側にも交流の電圧が生じるのです。しかも、それぞれの
コイルの巻き数を変えることによって、二次側に生じさせる電圧を変えることが
できるのです。トランスの一次側、二次側の交流電圧をそれぞれE1、E2、巻き数を
n1、n2とすると、E1:E2=n1:n2という関係が成り立ちます。
上のトランスは電源トランスをいう言い方をしますが、トランスにはもう一つ、
インピーダンス変換という働きを持たせたものがあります。ある二つの回路を
組み合わせる(つなぎ合わせる)際、両者の間を効率よく信号の「電力」が伝わる
ようにするには、両者のインピーダンスを合わせる必要があります。これを
インピーダンスマッチングと言います。
例えば、トランジスタで作ったスピーカを鳴らすためのアンプは、出力する側の
インピーダンスは数kΩですが、一方スピーカのインピーダンスは4〜16Ω程度です。
このまま両者を直接つないでも、インピーダンスの違いから伝達の効率が良くなく、
ほとんど鳴ってくれません。そこで一次側が1kΩ、二次側が4〜16Ω程度になるような
コイルの巻方で作られたトランス(この場合は出力トランスという)を間に入れると、
両者のそれぞれの能力を効率良く発揮させることができるというわけです。
トランスの一次側、二次側のインピーダンスをそれぞれ、Z1、Z2、巻き数をn1、n2
とすると、√Z1:√Z2=n1:n2という関係が成り立ちます。